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第18話HEADLINE

「ザリガニの鳴くところ・を読み解く?」

自由を得た女性
2年連続アメリカで最も売れた本の映画化という触れ込みに釣られ、現在公開されている『ザリガニの鳴くところ』を観てきました。

日本でも、2021年本屋大賞の翻訳小説部門で第1位を獲得しているくらいの作品なので、映画としてもなかなか見応えのあるものに仕上がっていました。

ただ、この作品があまりにも
「アルゴリズムの仕組み」に当てはまる内容だったため、今回は私の自己満足と備忘録のために文章を綴っているということを予めお断りしておきます。

また、作品の内容のネタバレを多数含みますので、本当にご興味のある方のみ読み進めていただければと思います。

この物語の舞台は、アメリカ・ノースカロライナ州のとある湿地帯。

村の有力者の息子である青年(チェイス)が変死体として発見されるシーンから始まり、不穏な空気を漂わせながら物語は幕を開けます。

高い物見櫓から落下したことが原因で死亡したと推測されたのだが、とある少女(主人公カイア)に殺人の嫌疑がかかり逮捕、拘束されてしまう。

カイアは広い湿地帯にひっそりと佇む一軒家に、一人で暮らしていた。

幼少の頃は、両親と姉や兄たちと自然の中で守られるように暮らしていたが、妻に対する夫の暴力が酷く、止むに止まれず母親は子供たちを残して家を去ってしまう。

その後、父の暴力は姉や兄たちにまで及び、耐えられなくなった姉兄も順に家を抜け出し、カイアは父と二人きりに…。

6歳のカイアは、自分なりの知恵で父親との関係性を築き、平穏に暮らしつつあったが、妻がもう戻ってこないことを悟った父親は、カイアを置き去りにしたまま姿を消してしまう。

ついにカイアは独りぼっちになってしまった。

ただ、彼女には自然の中で生き抜くための知恵と勇気があった。

彼女のことを気に掛けてくれるほんの僅かな大人もいた。

孤独ではあったが、広大な湿地帯の中で多種多様な生き物に囲まれて、カイアは逞しく、そして美しく育った。

ある日、カイアの元に村の青年(テイト)が接触しようとする。

テイトは漁師の息子で、湿地帯の生物に関心がある心優しき高校生。

町の人々から「湿地帯の娘」とあだ名され、不潔で異様な存在というレッテルを貼られて孤独に生きるカイアのことが気になっていたのだ。

人間不信のカイアだったが、生物を愛するという共通の想いを持ったテイトの優しさに触れ、次第に二人は心を許し合う関係に…。

信頼し愛し合った二人だったが、漁師を継ぎたくないテイトは、勉学のために村を離れることを決断する。

そして必ず戻ってくることを約束し、カイアがこれまでに書き溜めてきた生物たちの精巧な絵を出版してくれそうな会社のリストを渡して出発してしまう。

”カイアにとって、湿地帯は安心で安全な場所であり、現状維持から逃がさない強力なホメオスタシスが働いている。

そのことをテイトは理解しているため、一緒に行こうなどとは言えない。

カイアは現状に囚われ、湿地帯の外に出ようとしても出られないのだ。”

結局、帰って来ると約束した日にテイトは現れなかった。

家族全員に置き去りにされたように、愛していたテイトにも見捨てられたカイアには、再び孤独な日々が戻ってくる。

独りぼっちのカイアに、裕福な家庭で育ったチェイスという青年が近づいてきた。

チェイスはテイトと違い、やや粗雑なところがあったが、カイアに対しては優しく扱おうとする態度を示し、次第にカイアの懐に上手く入っていくのだった。

裕福な境遇で、将来を嘱望されているように世間では見られているが、本当は孤独を感じていて、カイアのことを理解できるのは自分だけだと。

”チェイスは最初、魅力的なカイアを浜辺に誘い、強引に押し倒そうとしたが、それを拒否されると、望まないことはしないからと優しく振舞う。

自分も孤独だと同調していることをアピールし、字の書けないカイアに文字を教えるなどしながら、巧妙にラポールを築いていく。”

ある日、カイアはチェイスに連れられて、湿地帯の中にある高い物見櫓を訪れる。

ここが、その後チェイスが死体として発見される場所だ。

”初めて物見櫓に登ったカイアは、湿地帯全体の大きさを知ることになる。

自分が過ごしていた世界はいかに小さなものだったか。

現状の外の広さを目の当たりにしたカイアの抽象度は、ここで一気に上がることになっただろう。”

チェイスとの良好な関係が続く中、開発業者による土地開発の計画がカイアの住まいに忍び寄る。

自分が暮らしてきた湿地帯の土地が、祖父が購入したものであることを確認したカイアは安堵するが、これまで未納だった税を納めることが土地所有の条件であることを知って、お金の工面をしようと試みる。

カイアは、テイトが残してくれた出版社のリストを引っ張り出し、これまで書き溜めてきた生物の模写を本にしてくれないかと打診の手紙を書く。

”テイトの残したリストは、他人が何気なく置いていくゴールである。

テイトの提案を思い出し、実際に手を出してみることは、現状の外に出ようとする行為だ。

サブゴールというエイリアンを捕獲することは、情報空間におけるランダムウォークの鉄則である。”

チェイスは父親が経営する店の支配人を任されることになり、いよいよ将来の安泰が目に見えてきた。

チェイスは、カイアにいつか結婚しようとほのめかす。

一方、カイアの出した手紙は出版担当の目に留まり、待望していた本の出版が現実のものとなった。

まとまったお金が手に入り、カイアは晴れて湿地帯の土地と家の所有権を得るのだった。

ところがある日、突然テイトが姿を現し、チェイスなんてやめておけと助言するが、自分を見捨てたテイトを許せないカイアは、彼を追い払ってしまう。

”サブゴールに挑戦し、チェイスとの良好な関係を築いていたカイアは、現状の外に出ようとしつつあった。

そんな時、元カレが戻ってきて変化するのをやめろと言うのは、完全なリバウンドだろう。

現状の外に一気に出ようとした時に、現状の中に押しとどめようとするのがアルゴリズムの作用だ。”

ところが、テイトの忠告通り、カイアは、チェイスの婚約者だと称する女性がチェイスと一緒にいるところに出くわしてしまう。

またしても裏切られたことに傷ついたカイアは、チェイスから身を隠そうとした。

それでも何とか取り繕おうとするチェイスは、執拗にカイアを追いかけまわす。

チェイスに見つかってしまったカイアは、彼を押しのけようとするが、逆上したチェイスに顔面を殴られてしまう。

身の危険を感じ、かつての父と母のことを思い出したカイアは、どうして母親が自分を置き去りにせざるを得なかったのかを理解した。

”チェイスがカイアのことを本心ではどう思っていたのかは、映画の描写だけでは判別がつかない。

ただ、本命の婚約者を知ることになったり、彼から暴力を振るわれたりするなんて、もはやリバウンドの嵐ではないか。”

顔には殴られた際のあざが出来てしまっていた。

2冊目の出版の打ち合わせのために、編集者に会いに町まで出向かなくてはならないのに…。

カイアへの深い愛情に気付き戻って来たテイトは、当時の優しさのまま、編集者に会って来るようにカイアを促す。

カイアはそれに従い、バスに乗って村を離れた。

彼女が村を出発した日の深夜、チェイスは物見櫓から落下し、帰らぬ人となってしまう。

チェイスの死体に付着していた遺留物からカイアに疑いがかかり、彼女はチェイス殺害の容疑で逮捕されてしまう。

”留置所に閉じ込められてしまうなんて、リバウンドの極地だ。

さあ、ここからカイアの裁判が始まるのである。

実のところ、この映画は、裁判の進行過程を現在の時間軸として、そこに過去の出来事が挿入されるという構成になっている。

留置所の中でカイアは、必ず外に出なくてはと思い願うのだが、それは強いゴール設定を意味している。”

カイアには、完璧ではないにしろ、編集者と会っていたというアリバイがあった。

検察側の主張は、カイアは深夜にこっそりと村に戻り、チェイスを誘ったあげく櫓から突き落とし、証拠を消して再び町に戻ったというものだった。

カイアに対する村人の思いは偏見に満ち満ちたものであった。

彼女は幼少の頃から「湿地帯の娘」と蔑まれ、偏見の渦の中で生き抜いてきた。

村人は当然のように、カイアの有罪を望んでいる。

しかし、村をずっと見守ってきた老齢の弁護士は、カイアの真の姿を聴衆に訴えようとした。

偏見の眼で彼女を見るのではなく、ありのままの事実のみで判断してはどうだろうかと。

陪審員の出した答えは、無罪だった。

解放されたカイアは、その後テイトと結ばれ、数冊の生物図鑑を出版し、親しい仲間との良好な関係を築きながら、湿地帯の中で静かに、そして心豊かに暮らした。

死が訪れるまで、愛する夫と自然と共に幸せな時間を過ごした…。

”カイアはゴールを実現するために、非常に大胆な行動に出たことを、観客は最後になって知らされることになる。

ゴールを達成するためには、自分を一旦どん底に突き落とし、そこからのリバウンドを利用するという手段がある。

すっかり忘れていた…。

彼女は、幼いながらもたった一人で自然の中を生き抜いてきた逞しさと知性を兼ね備えていたのだった。

下手をすれば全てを失いかねないような禁じ手じゃないか。

それでも、彼女にはゴール達成を邪魔する要因を排除する必要があった。

アルゴリズムに善悪の判断などはない。

ただ、ゴールは彼女を強く強く引き寄せるだけであった。”

さて、長い長い考察もようやく終わりに近づいてきました。

映画を観ただけの感想なので、原作を読めばさらに細かい心理描写も加わって、今とは違った印象を抱くかもしれません。

ここで言うアルゴリズムとは、「情報空間における恒常性維持システム」という程度にご理解ください。

カイアの暮らしは湿地帯という場所こそ変わりませんでしたが、現状の中身は大きく変化しました。

それは彼女が現状の外に出ようと、果敢に行動に移した結果なのだと思います。

私は映画を観ている途中から、「ああ、アルゴリズムの機能がしっかりと働いているなぁ」と、そんな視点ばかりで眺めていました。

こんな長い文章をここまで付き合って読んでくれて、共感してくれる人なんているのだろうかと思うのですが…。

実はこれでも、「開運ヒーリング」でお伝えしているようなアルゴリズムの仕組みを惜しみなく散りばめたつもりなんですよ。(笑)

(2022年11月27日)

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