第2話HEADLINE
「不安の正体とは?」
不安という感情はとてもやっかいなものですよね。
最近の報道によると、若者の8割以上が収入や年金に対する不安を抱いているということです。
不景気が長く続いたり、大きな地震が近いうちに起こるなどと聞けば、将来的な不安を感じても無理のないことでしょう。
私も不安で胸が押し潰されそうになったことが何度もありますが、今では不安を感じそうになった時にいつも思い出すようにしている言葉があります。
それは、以前、NHKの大河ドラマ『天地人』の中で流れたあるシーンでのセリフなのですが、次のようなものです。
主人公・直江兼続の主君である上杉景勝は、天下統一を目前とした秀吉に上洛することを求められていました。
しかし、上洛することは秀吉の天下取りを認めてしまうことになるため、決断できずに迷っていました。
景勝は、いずれ上杉謙信の後を継ぎ、上杉家を束ねていかねばならないという重圧を不安に感じ続けてきた幼少期の自分と今の自分とを重ね合わせ、兼続に不安な気持ちを吐露するのでした。
そのことを知った兼続や景勝の幼少時の指導者である北高全祝という住職は、景勝に対してこのように言いました。
「不安とは己の心が勝手に作る幻でござる。達磨大師の教えをお忘れになったか」と。
あまりに痺れるセリフだったので、思わず書きとめてしまいました。
確かに、不安で頭がいっぱいになっている時って、自分で勝手に不安感を増大させているんですよね。
まだ実際に起きてもいないことに対して、ネガティブな思いをどんどん積み重ねていってその幻に苦しめられている。
つまり、今を生きていないということになります。
このことは憎しみや妬みといった感情にも同じようなことが言えるかもしれませんね。
もちろん不安という感情は、危険を回避するためには必要な本能だと言えるでしょうし、将来起きそうなことをシミュレーションして何が起きても対応できるように備えておくことは、意味のあることでしょう。
それでも出来ることなら、豊かな想像力は悪しき幻を膨らませることにではなく、希望ある未来を描くことにこそ使いたいものです。
自分の思い癖を修正していく日々の訓練が大切ですね。
それから、体が楽になるだけでも、気分が明るくなったり、考え方が前向きになったりするものです、ということを最後に付け加えておきます。
(2012年5月15日)
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