第4話HEADLINE
「実はこれにハマりました…」
昨年の12月、ちょっと訳あって急に自宅を引っ越すことになりました。
時間があまりない中での準備はなかなかはかどらず、直前は睡眠時間を削っての作業となりました。
引っ越し当日は何年かぶりの徹夜をしてしまいました。
調子に乗って、引っ越し業者さんの手伝いまで買って出てしまったので、その後の疲労感はひどいものでした。
例年ですと、元旦には届くように準備している年賀状も、年が明けてからお返しするという形になってしまいました。
届いた年賀状を確認しながらメッセージを考えていきます。
友人からの一枚に「私は、〜にハマっています」というコメントがありました。
そこで、私もそれに倣ってお返ししようと考えたのですが、「はて、自分はいったい何にハマったと言えるのだろうか?」と頭を悩ませてしまいました。
流行りのアイドルグループたちにはお熱を上げていないし、昨年ヒットしたドラマ『半沢直樹』も観そびれました。
じぇじぇじぇの『あまちゃん』だって、朝のラジオ番組でアイドル評論家の中森明夫さんがあまりに絶賛するもんだから、後半の3分の1程度を観たくらいです。
毎日がありふれているのでしょうか、熱中したと思えるものがなかなか出てきませんでした。
ただ、そんな中で一つだけ思い当たるものが浮かびました。
私は何巻にもわたる長編小説をあまり好んで読むことがありません。
上下巻くらいだといいのですが、長すぎるものは最初から敬遠してしまいます。
飽きっぽいのかもしれません。
『三銃士』は何とか全3巻読めました。
『宮本武蔵』は全8巻中、5巻の途中で放ってあります。
まあ、そんなもんです。
そんな私でも、昨年、全6巻を続けて読んだ作品がありました。
荻原規子さんの『RDG レッドデータガール』というファンタジー小説です。
世間知らずで極度の人見知りである一人の少女が、自らの秘められた特別な能力に目覚めていく成長物語なのですが、続きが気になって全部読んでしまいました。
最初は正直、若い少年少女が中心のストーリーに感情移入できるだろうかと思って読み始めましたが、登場するキャラクターの誰もが魅力的で、作者が伝えようとする大切な想いが彼らのかっこいいセリフとなってあちこちに散りばめられているので、飽きることなく読み進めることが出来ました。
(う〜ん、ちょっとオーバーに書いちゃったかな?)
ただ、最後まで読み通せた大きな理由は、この物語が修験道や陰陽道などを主要な題材として扱っていたからだということが言えます。
以前のコラムにも書きましたが、「気」という通常、目には見えないものの存在を当然のこととして自覚していると、目には見えない世界のことが不思議ではなくなってきます。
人間の目には捉えられずとも、科学的に存在を認められていることなどいくらでもあります。
自分の目には映らないということがその存在を否定する理由にはなりません。
ですから、この物語には神霊や呪術や憑坐などといった神秘的な事柄が当たり前のように出てきますが、それだからこそ興味を持ち続けることが出来たのだと思います。
「気」というものも、感じられない人にとっては存在のしない理解しがたい世界なのかもしれません。
でも、答えが簡単に出せないような事象に対しては、科学的に捉える冷静な眼と神秘性を端から否定してしまわない柔軟な眼の両方が必要だと思うのです。
何だか真面目な話になってしまいましたが、私も分からないことばかりで、いつも「分からん…」とつぶやいています。
ところで、結局のところ私は『RDG』にハマったと言えるのでしょうか。
実は、小説だけにとどまらず深夜のアニメ版も毎週チェックしてしまっていたくらいですから、一応、そのように表現しても構わないだろうということにしておきます。
そして、友人への年賀状にもそう書いて、送っておきました。
(2014年5月16日)
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